すでに神話とまでなった、エルメスのスペシャルオーダーバッグ。エルメスをこよなく愛する顧客のみがカスタムオーダーできるケリーやコンスタンスのことで、馬蹄刻印が刻まれたその存在を誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
それにしても、こうした希少性はどうやって見分けられるのでしょうか。そして、どんなモデルが人気が高いのでしょうか。ここでは、部内者間でエクスクルーシブな「エルメス馬蹄クラブ」とも呼ばれるこのサービスに完全アクセスするにはどうすればよいかをご紹介します。
エルメスの顧客は、これまで何世代にもわたってブランド側に個人的なリクエストをしてきました。バーキンやケリーラキ、そして《コリエ・ド・シアン》ブレスレットは、すべてこうした顧客のリクエストから生まれたものです。
ですが、こうしたサービスが「スペシャルオーダー」という正式な名称と馬蹄形の認証刻印を得たのは、ほんの10年ほど前のことです。
それ以前は、スペシャルオーダーの製品には識別マークがありませんでした。
通常のエルメスマークの左に刻まれた馬蹄形の刻印(「HSS」とも呼ばれています)は、エルメスブランドに忠実な顧客、そしてエルメスから大切にされている顧客としてのステータスを示す、暗黙の了解のようなものなのです。
自分だけのクラシックなエルメスバッグ「作り」に誘われるというのは、幸運な人だけに与えられた、貴重な特権です。さらに、高級製品が瞬時に手に入るこの時代にあって、これはまた、時間をかけた職人技や創造性に対する究極の評価のしるしでもあります。
"高級製品が瞬時に手に入るこの時代にあって、エルメスのスペシャルオーダーは、時間をかけた職人技や創造性に対する究極の評価のしるしである"
スペシャルオーダー品に刻まれる馬蹄刻印をはじめとした、エルメスの刻印について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
▷2024年最新版】エルメスの刻印一覧|製造年代や意味を解説
スペシャルオーダー(エルメス用語でSO)の魅力のひとつは、その希少性です。制作に時間がかかりますので、このサービスは一部の招待客にしか提供されていません。
スペシャルオーダーのバッグは、年に2回、購買頻度や購入額の高い、エルメスの最も忠実な顧客にのみ提供されます。担当のセールスアシスタント(SA)と良好な関係を築いていれば、スペシャルオーダーのハンドバッグを作るチャンスが与えられる場合もあります。
各店舗で提供できるスペシャルオーダーの数は大変限られていますので、自分はそうしたチャンスに興味があるとSAに伝えるなり、SAに丁寧に手順を尋ねてみるのもよいでしょう。
チャンスが訪れた場合、これ以外では決して手に入らない、というようなバッグをオーダーしましょう。
例として、トゴ革のケリー外縫いは非常に稀な組み合わせであり、HSSオーダーアイテムとしてはなんとしても手にいれたいアイテムとなっています。
どう変えられるかという選択肢については、膨大ではあるが無限というわけではありません。スタイル、素材、カラー、金具、ステッチといったバッグを構成する要素の組み合わせは、ほとんど数学のパズルのようなもので、カスタマイズできるものとできないものは頻繁に変わります。
エルメスバッグのすべてがカスタマイズできるわけではありません。2021年に提供されているバイカラーのスペシャルオーダーには、バーキン、バーキンセリエ(外縫い)、ケリー外縫い、ケリー外縫いミニ、ケリー内縫い、ケリーアド、ケリーダンス、ケリーミニ、ケリーカットがあります。
バイカラーのバッグには、Line(ライン)、Verso(ヴェルソ)、Multico(マルティコ)という3つのオプションがあります。ラインは糸のコントラストを特徴とし、ヴェルソはバッグの内側に2色目が、マルティコはバッグのハンドルと側面に2色目が使用されているのが特徴です。
単色のスペシャルオーダーであれば、コンスタンス24やミニなど、より多くのモデルから選択することができます。
スタイルとサイズが決まったら、次はいよいよお楽しみの素材とカラーの選択です。選べる素材とカラーは、バッグのモデルによって異なります。
バーキンなら、シェーブルミゾール、トリヨンクレマンス、エプソン、スイフト、トゴから選べます。VIP顧客には、クロコダイルやオーストリッチといったエキゾチックレザーのオファーが出来る場合もあります。
"エルメスのVIPでなくても、このような超限定版のHSSバッグを手に入れることが可能です。中古市場に出回っている物も多いからです"
エルメスは、豊富なカラーライブラリーで知られており、すべてのコレクションのシーズンパレットを選択する独自の「カラーカタログ」があります。
気まぐれなミルクセーキのようなピンクの「ローズサクラ」をはじめとするピンク系は、二次流通市場でひっぱりだこです。クレ(白亜のオフホワイト)や、雲の色をしたブルーブリュム、シエル、そしてバーキンで人気の高いブルーサフィールに代表されるブルー系など、定番カラーも需要の高いカラーです。
鮮やかすぎるカラーにはちょっとためらいがあるという方には、スペシャルオーダーのミニケリーのような小さめのバッグを検討してはいかがでしょうか。遊び心のあるカラーの場合、コンパクトなクロスボディモデルなら、財布やジュエリー感覚で限りなく身につけやすくなります。
そのほかにも、ニュートラルなカラーのバッグの内側にコントラストの効いたポップなカラーを入れることで、バッグの印象を高めるというやり方もあります。
スペシャルオーダーのバッグで選べるカラーは最大2色ですから、ツートーンの色使いで妥協するのが賢いやり方だと思います。トリコロールカラーのHSSはもう提供されていませんが、中古市場でたまに見かけることがあります。
以上がカスタマイズのポイントですが、忘れてはならないのが、金具の仕上げです。
通常のオプションは、ゴールド(GHW)、ブラッシュドゴールド(BGHW)、パラジウム(シルバーカラー、PHW)、ブラッシュドパラジウム(BPHW)、そしてコンスタンスのみローズゴールド(RGHW)が提供されています。ブラッシュドメタルは傷がつきにくいとされているので、頻繁に使うバッグには最適かもしれません。
最後に、ステッチやポケット、ストラップの長さなども自由に変更できますし、イニシャルを刻印したり、小さなメタルモチーフをあしらったりして、究極のパーソナルブランディングを実現することも可能です。モチーフのデザインには、馬の頭部、流れ星、鍵穴付きのハート、四つ葉のクローバーなどがあります。
エルメス愛好家の中には、スペシャルオーダーでエキゾチックレザーを指定するチャンスを与えられるのが究極の夢だ、という人も少なくありません。貴重な名誉などという言葉では言い足りないほどのチャンスなのです。
エキゾチックレザーのスペシャルオーダーは、すべての店舗でできるわけではありませんし、可能な店舗であっても数が限られているため、超VIP顧客のみに与えられる名誉となっているのです。
エキゾチックレザーは、スペシャルオーダー・バッグの中でも最も我慢を要するアイテムでもあります。注文してからお披露目できるようになるまでに3年も待たなければならないこともあるからです。
エルメスのVIPでなくても、このような超限定版のHSSバッグを手に入れることは可能です。中古市場に出回っている物も多いからです。
カスタムメイドのバッグは完成までに半年から3年はかかりますから、バッグを注文した客が完成品を待たずに似たようなバッグを購入していたり、注文した後に心変わりしたり、といったことは当然起こり得ます。
注文客に購入の義務はありませんが、エルメスのSAと大切な関係を育みたいという気持ちから、注文品を購入するお客様がほとんどです。
そして、そうしたお客様は、HSSをこっそり中古市場に売りに出します。こうして、HSSは早い者勝ちで入手可能となるのです。
スペシャルオーダーのエルメスバッグは、値崩れしない、そしてしばしば元の価格より高値がつく、ということで知られており、中古市場では10万ドルもの価格で取引されることもあります。
ただ、おそらく最も重要なことは、エルメスバッグのコレクションに一点ものを加えることで、自分だけのストーリーを物語るという価値が高まる、ということではないかと思います。
そしてその価値は、どれだけ誇張してもし過ぎることはありません。
この素晴らしい一生モノを自分だけのアイテムとする方法は数多くありますから、需要が急増するのも不思議ではありません。
エルメスのハンドバッグにどんな組み合わせを求めようと、完璧な一品があなたを待っていることを忘れないでください。そしてその一品には、卓越の証として極めて重要な、馬蹄形の刻印が付いているはずです。