エルメスと聞いて思い浮かぶのは、バーキン、ケリーそれともコンスタンスでしょうか。この3つのコレクションはもちろん非常に有名なものですが、これらはエルメスが発表した最初、または最後のものではありません。エルメスには120年以上のバッグ作りの歴史があり、一度きりの特別オーダー、限定版、さらに廃盤になったデザインを含め驚くほど膨大なバック・カタログが存在します。実際、80を超えるモデルが流通しています。ここでは2021年リリースの最新作を含む、エルメスの基本を紹介しましょう。
それはバッグではなく、バーキンです。エルメスのバーキンは独自性の象徴とも言えます。思わぬ偶然がこのバッグを生み出すことになったのですが、それはイギリスの女優、ジェーン・バーキンとエルメスの社長が出会い、母親が持つのにふさわしいバッグがなくて困っていると知ったのがきっかけでした。そうして、この優美なマルチポケットの実用的な伝説のバッグが生まれたのです。これはエルメスにまつわる様々な神話の中でも最も語り継がれているものの一つです。バーキンには25、30、35、40、45そして50センチのサイズ展開があります。
この特徴的なエルメスのバッグは元々、サック・ア・クロアという名称でした。これが一躍有名になったのは、ハリウッド・スターでモナコ王妃となったグレース・ケリーが、妊娠を知られないようにこのバッグでお腹を隠したことからでした。その後バッグの名称は改められ、以降エフォートレスシックの代名詞となりました。ケリーはエルメスバッグの中でも最も多くのシリーズが展開されています。ケリーは25、28、32、35、40そして50センチのサイズ展開があり、さらにミニケリーポシェットとクロップドバージョンであるケリーカットがあります。
“ケリーバッグはグレース・ケリーがそのバッグで妊娠したお腹を隠したことから一躍有名になった。”
エルメスのコンスタンスは、バーキンとケリーと合わせて三位一体、あるいはBKCトライフェクタとしても知られ、ファッションハウスでも最も魅力あるバッグです。手軽なエレガントさと大胆なシルエットが特徴のコンスタンスはフラップトップと大きなHのバックル留めが目を引くショルダーバッグです。長い年月の間、Hのバックルはレザーやエキゾチックなはめ込み細工、ダイヤモンド、エナメルやキロシェダイヤモンドカットなど様々な形で作り変えられてきました。しかしバックルは様々に変化させながらも、コンスタンスのその他の部分は当初から全く変わっていません。タイムレスなクラシックは元アメリカ大統領夫人のジャクリーン・ケネディ・オナシスが愛用したことでも知られ、現在でもその人気は衰えていません。コンスタンスはサイズ展開も豊富です。ヴィンテージスタイルは23、25、そして29センチがあります。現在はミニ(18cm)とコンスタンス24が多く見られます。またマイクロ(14cm)、エランとカルターブル(29cm)もあります。
ケリーはエルメスのバッグの中でも最も多く再定義されています。そのターンロックと形状はケリーポシェットやケリーカットのようなクラッチにもインスピレーションを与えました。よりスポーティーなバージョンにはケリースポーツ、ケリーアド、ケリーダンスやケリーラキなどがあり、これはケリーにジッパーが付いたものです。ケリーファミリーの中なら、どんなスタイルのバッグでも見つけることができるでしょう。
シンプルでエレガント、エルメスのガーデンパーティーはカジュアルで耐久性の高いトートバッグに実用的なクルードセルのスナップファスナーが付属することで、構造的なシルエットを実現、またバッグのスペースが広くなっています。また、バーキン、ケリーやコンスタンスと比較して非常に手ごろな価格帯で販売されています。ガーデンパーティーは30、36と39センチのサイズ展開です。
エルメスのリンディバッグは柔らかなデザインで、体の曲線を包むように作られており、非常に快適に持つことができます。ハンドルの位置が、ほとんどのバッグに垂直に取り付けられているので腕を通して持つことができ、腕の位置はより自然に、またバッグも体に近いところで持つことができます。さらにショルダーストラップも付いているので、エルメスのバッグの中でも最も実用的なものの一つとなっています。1920年代のスイングダンスから名付けられたリンディホップは、動くために作られています。リンディはミニ20センチとサイズ26、30、34と45サイズで展開されています。
“リンディは丸みのあるデザインで、体の曲線を包み込むように作られています”
エルメスの最も古いバッグデザインはブランドの馬具のルーツに遡ります。エルメスのオータクロア(HAC)は鞍や乗馬用ブーツを運ぶためにデザインされました。実用的で丈夫なバッグ、HACはエルメスの職人技の証しです。バッグのスタイルはバーキンと似ていますが異なる部分もいくつかあります。最も分かりやすいのは、HACの方がより高さがあり、ハンドルはより長く、ターンロックも異なり(バーキンは丸みがあり)、ベルトの幅が広くなっています。
エルメスのボリードは100年以上もの間、世界中を旅する人にとって頼れる相棒でした。このバッグの特徴は初めてジッパーを採用したことです。耐久性の高いつくりで旅行にも持ち歩くことができ、また丸みを帯びた形は、旅先でも必要なものを取り出しやすくなっています。
エルメスのピコタンは馬の飼料を入れるバッグから着想を得た、軽量なバケツ型のバッグで、ブランドの馬具のルーツに遡ります。ナチュラルレザーの裏地と可愛らしいエルメスのパッドロック留めの、驚くほどシンプルなつくりです。
エルメスのエールバッグは人気の「エントリーレベル」の手ごろなプライスポイントのバッグです。エールバッグはキャンバスとレザーのバッグで、スタイルはケリーに似ており、同じ形、ハンドルストラップ、クロシェットとパッドロックを採用しています。さらにエールバッグの面白い特徴はバッグ本体を外して交換することが可能で、複数のエールバッグを所有している場合は組み合わせを変えて楽しむことができることです。バッグは異なる色や形で、バックパックも販売されました。
エールバッグは廃盤となりエルメスエールバッグジップとして復刻、こちらは取り外し可能なインナーポーチと外側にジップアップポケットが付いています。
このクロスボディバッグはエルメスの中でも目立つモデルの一つであり、厚みのあるショルダーストラップとフロントにパンチングされたHのロゴが特徴です。1978年に馬の手入れ道具を運ぶためのバッグとしてリリースされたこちらのバッグの小さな穴は、ブラシの乾きを良くするための通気口としての役割を持っていました。しかし、他の多くのエルメスの馬具デザインと同様に、このバッグもイージーで柔らかなスタイルが人気となりました。エブリンは16から40センチまでのサイズで、耐久性の高いトワルキャンバス、またトゴ、エプソン、またその他様々なレザー素材で展開されています。
エルメスの2021年春夏のショーでは2つの新しいバッグが発表されました。一つ目はモールドゥブリット、レザーの馬勒から名付けられています。この馬具テーマはすでにエルメスのジュエリーシリーズの中でも同じ名称で展開されています。馬勒から得たインスピレーションはこのバッグのレザーストラップやフープ型のシルバー金具といった構造に反映されています。
新作バッグの二つ目、パースペクティブ・キャバリエールは非対称のオープントップショルダーバッグで、スモールとラージサイズがあります。このバッグは、フランスの製図家による、三次元の形態をフラットなページに落とし込むドローイングスタイルから名付けられました。エルメスの2021秋冬コレクションではバーキンをアップデートさせた取り外し可能なポシェットと、ミニバッグのトレンドのさらに先を行くエルメスウェイが発表されました。機能的なバッグは、携帯電話、AirPod、クレジットカードやリップスティックなどを入れるコンパートメントで形成されています。パンデミックによって、持ち物が少なくなった人にとって、このミニマリストなデザインはライフスタイルにもぴったり合うでしょう。調節可能なストラップ付きで、肩にかけたり、斜めがけにしたり、ネックレスの様に使うこともできます。バッグはブラック、ボルドー、またサフランレザーで展開されます。
エルメスのバッグデザインをもう少し掘り下げてみれば、あなたのムードにぴったりのものが必ず見つかるはずです。私たちが知る限りの、すべてのエルメスのバッグスタイルをリストにしました。載っていないものがある?それなら是非お知らせください。